はじめに
「今月、リール何本あげましたか?」——この質問には、みなさんスラスラ答えられます。でも「それで、何人がお客さんになりましたか?」と聞いた瞬間、ほとんどの方が黙ってしまう。
第14話は、そんな話から始めました。SNSの潮目がはっきり変わってきたこと、そして変わった結果、勝負どころがどこに移ったのか。第4話「SNSは無料じゃない」の続きにあたる回です。
再生数は、それ自体では意味を持たない
再生数が10万回いきました、すごいですね。——で、そこから何件のお問い合わせが来ましたか。何人が来店しましたか。この質問に答えられないなら、その10万回は正直よくわからない数字です。
実際にこういうケースを見たことがあります。地方の事業者さんで、リールが数万回再生されて、ご本人もすごく喜んでいた。でも売上はぴくりとも動いていない。伸びた理由が「面白かったから」だったんです。おもしろ動画として消費されて、その地域に住んでいない人にも、その商品をまったく必要としていない人にも、どんどん届いていた。数字は伸びる。でもお客さんにはならない。
ここで大事になるのがCV、コンバージョン、つまり「何をもって成果とするか」の設定です。問い合わせなのか、来店予約なのか、資料請求なのか、LINE登録なのか。先に決めていないと、どれだけ再生数を稼いでも評価のしようがありません。
もうひとつ。インフルエンサーの方が言っている「正解」を、そのまま鵜呑みにするのは危ないです。悪意があるという話ではなく、単純にビジネスモデルが違う。彼らは再生数と認知そのものがお金になる商売です。地方でお店をやっている、BtoBで商品を売っている。そういう事業とは前提がまるで違うので、同じ物差しを持ってくるとだいたい外します。
アカウントを伸ばす時代から、コンテンツが伸びる時代へ
昔は「良いアカウントを育てる」ゲームでした。フォロワーを集めて、そのフォロワーに届ける。だからフォロワー数がそのまま力だった。
でも今は、フォロワーかどうかに関係なく、おすすめやリールのフィードに「良いコンテンツ」が流れてくる比重が明らかに上がっています。コンテンツを重視するというのは、メタも公式に言っていることです。つまりアカウントの規模より、そのコンテンツ単体が良いかどうかで判断されるようになってきている。
しかもAIの進化でターゲットの細分化が細かくなりました。見る側からすると「見たいものを見せてくれる」、出す側からすると「届けたい人に届きやすくなった」ということです。
これは地方の中小事業者にとって、かなりのチャンスです。フォロワー1万人のアカウントと正面から数で殴り合わなくていい。フォロワーが300人でも、刺さるコンテンツを作れば、必要としている人に届く可能性がある。数の勝負から、中身の勝負に変わってきています。
そしてこれは「これからそうなる」ではなく、「もうなった」という話です。
勝負どころは「集客設計」
中身の勝負になった。では、その中身は何で決まるのか。センスでしょうか。違います。設計です。
私が集客設計と呼んでいるのは、ざっくりこの4つを先に決めることです。
1. 誰に届けたいのか(ターゲットをどこまで細かく分けられているか)
2. どうしたらその人が見てくれて、興味を持って選んでくれるのか
3. 最終的にどうやって購買まで持っていくのか
4. そのお客さんにどんな道のりを歩んでもらうのか(カスタマージャーニー)
この4つを設計しきったうえで、はじめて「フロントに置くSNSのコンテンツはどうしようか」という企画に移る。この順番です。
でも多くの方は逆で、「どうしたらバズるか」「どうしたらいいねがもらえるか」から入る。そうすると、いいねはもらえるけど何も起きない。そのいいねを次のどこに繋げるかを決めていないので、当たり前なんですよね。
これ、実は商品設計の話とほとんど同じです。この商品を欲しい人はどんな人か、この商品はどんな課題を解決できるのか。そう考えながら商品を設計する。そして営業では、ニーズを持っている相手に「こういうことでお困りではないですか、この商品ならこう解決できます」と伝えて、対価をいただく。それが事業活動です。SNSも同じです。対面ではないぶん「どうしたら伝わるか」は難しいけれど、考える基盤はまったく変わりません。
「とりあえずやってる」問題
現場でいちばんよく見るのがこれです。とりあえずフォロワーを増やそう、とりあえず認知を取ろう。大事なんです。でも、それだけだと本当にもったいない。
「フォロワーが3,000人まで増えたんですけど、売上が全然変わらないんです」という相談をよくいただきます。悪いことをしたわけではありません。フォロワーを増やすところまでは、ちゃんとやりきっている。すごいことです。問題は、増やした「その後」が決まっていないことです。
フォロワーが増えたら次に何が起きてほしいのか。認知が取れたら、その人に次に何をしてほしいのか。そこが空白のままだと、フォロワーはただの数字で終わってしまう。
逆のケースもあります。フォロワーは数百人しかいないのに、予約が入り続けているお店。何が違うかというと、投稿から予約までの動線が全部つながっているんです。投稿でお客さんの悩みに触れて、プロフィールに何屋さんか明記されていて、ハイライトにメニューと料金があって、予約ボタンがすぐ押せる。フォロワー数ではなく、設計で回っている。
そのお店の方は、実は感覚でそれができていた方でした。「自分のやっていることをもっと知ってほしい」「このこだわりを知ってほしい」。事業を始めたきっかけをそのまま発信していただけなんです。私がやったのは、予約動線を引き直してお客さんの面倒くささを減らしたくらいでした。
購買のプロセスは業種によってまったく違います。単価が高ければ検討期間は長いし、地元の飲食店なら思い立って当日来る。だから「うちの事業に合った集客設計」を自分で作らないと、効果は最大化できません。よそでうまくいったやり方をそのまま持ってきても、たいてい噛み合わないんです。
コンテンツの質が、信用の判断材料になっている
今は、バズったからお客さんが来る時代ではありません。消費者はコンテンツそのものを見て、「ここは信用できるかどうか」を測っています。
私たちも普段やっているはずです。気になるお店を見つけて、インスタを開いて、投稿を何個かスクロールして、「ちゃんとしてそうだな」「なんか雑だな」と数十秒で判断している。そこで見られているのはフォロワー数ではなく中身です。写真の丁寧さ、説明の分かりやすさ、誰に向けて言っているのかの明確さ。
つまりコンテンツは、集客の道具であると同時に、信用の証明書にもなっている。だとしたら「何を伝えたいのか」は絶対に明確にしないといけません。全部盛りにすると、結局なにも伝わらない。広告でも同じですが、1コンテンツ1メッセージは基本にしたほうがいいと思っています。
そして、その「伝えたいこと」を明確にするには、結局さっきの設計が要る。誰に、何を、どう届けて、最後どうなってほしいのか。ここが決まっていれば、1本の投稿で言うべきことは自然に絞れます。ぐるっと回って、また設計に戻ってくるんです。
なお、バズを狙うこと自体を否定しているわけではありません。100万回再生のリールがおすすめに出てきて、気になってプロフィールを訪れる。そういうきっかけの装置にはなります。大事なのは、それを意図してやっているのかどうかです。
まとめ
・再生数は単体では意味を持たない。CV(何をもって成果とするか)を先に決める
・インフルエンサーの「正解」はビジネスモデルが違うので鵜呑みにしない
・アカウントを伸ばす時代から、コンテンツが伸びる時代へ。小さい事業者にはチャンス
・勝負どころは集客設計。誰に、どう選ばれるか、どう購買まで、どんな道のり
・「とりあえずフォロワー」「とりあえず認知」の「その後」を決める
・コンテンツの質は信用の判断材料。1コンテンツ1メッセージ
SNSの話としてお伝えしましたが、ホームページでもチラシでもまったく同じです。媒体が変わっても「誰に、何を、どう届けて、どうなってほしいのか」は変わりません。
もし今、投稿は続けているけれど手応えがないという方がいたら、いったん手を止めてもいいと思います。それより紙に4つ書いてみてください。誰に。何を。どう届ける。最後どうなってほしい。ここが埋まらないうちは、何本あげても同じところをぐるぐるすることになります。
最後にひとつ。かつては投稿頻度が命という時代もありましたが、今は違います。Instagramの責任者も、毎日投稿でバーンアウトするより、続けられる頻度で続けるほうが大事だと言っています。週に1本なら1本、2本なら2本。続けることに意味がある。そして続けるための指標としても、やっぱり設計が必要なんです。
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