売上が落ちた原因は、感覚ではなく数字が知っている。思い込みの客層、客数と単価の分解、感覚と数字の使い分け――地方の現場から「数字の読み方」を語ります。
はじめに
「数字は苦手で、ずっと感覚でやってきました」。地方の経営者の方とお話ししていると、本当によく聞く言葉です。気持ちはとてもわかります。ですが荒田は、経験上こう考えています――数字から逃げている経営者ほど、少しずつ経営が苦しくなっていく。逆にうまくいっている方は、皆さん数字を見ている。今回は少し厳しめのテーマ、「数字から逃げるな」をお届けします。
本編
① マーケティングの実体は、数字とのにらめっこ
マーケティングと聞くと、キャッチコピーや話題のキャンペーンのように、センスや感覚の世界を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも実際の仕事の中身は、ほとんどが数字とのにらめっこです。地味なんです。荒田が知る限り、優秀なマーケターに数字が読めない人は一人もいません。どれだけかっこいいフレーズを考えても、お客さんが反応しなければゼロ。「これいけてるでしょう」と自分が思っても、反応率・来店数・リピート率という数字で答え合わせをしなければ、当たっているのか外しているのかすらわからないのです。
② 思い込みの客層は、だいたい間違っている
経営者の方は、自分のお客さんのことをわかっているつもりでいます。「うちは40代の主婦が中心」「地元のお年寄りが多い」――長くやっている方ほど言い切ってしまう。ところが、あるお店で購買データを整理してみたら、メインだと思っていた層は全体の3割しかいませんでした。むしろノーマークだった別の層が、売上の半分近くを占めていたのです。問題は、その経営者の方がチラシもSNSも、思い込んでいた3割に向けて作っていたこと。本命のお客さんには、何のメッセージも届いていなかった。やることが逆だったんですね。数字を見た瞬間に、力を入れるべき相手がくっきり変わります。
③ 売上が落ちた本当の原因は、数字にしか書いていない
売上が下がると、多くの経営者は「集客だ」と考えます。お客さんが減ったに違いない、と。それでチラシを巻き、SNSを頑張り、広告を出す。でも、あるお店で売上を分解してみました。売上はざっくり『客数×単価』。この2つに分けて見たところ、客数はむしろ増えていたんです。落ちていたのは単価のほうでした。理由を追うと、値引きキャンペーンが常態化し、安いメニューばかり出るようになり、高単価商品をすすめる声かけがいつのまにか消えていた。原因は全部、単価側にあったんです。もし数字を分けずに感覚で判断していたら、足りている集客にお金と労力をつぎ込み続けていた。しかも新規を安いメニューで呼ぶから、さらに単価が下がり、傷口が広がる。だから「忙しいのに、なぜか手元に現金が残らない」ということが起きるんです。
④ 感覚には限界がある。でも、感覚を捨てろとは言っていない
ここまで散々「感覚じゃダメだ」と言ってきましたが、誤解しないでください。感覚やセンスを捨てろという話ではありません。現場の肌感覚は「なんか最近、雰囲気が変わってきた」と、いち早く異変に気づかせてくれます。ただ、感覚は気づきには強いけれど、原因の特定には弱い。「なんかおかしい」までは感覚でわかっても、「何がどれくらいおかしいか」は数字を見ないとわからない。だから、感覚で仮説を立てて、数字で確かめる。この順番です。もう一つ大事なのが、評価軸をぶらさないこと。今日は客数、明日は気分で単価、とやっていると、良くなっているのか悪くなっているのかわからなくなる。常に同じ物差しで、定点で見続ける。地味ですが、これができる人が結局いちばん強いんです。
実務のヒント:単価は、いちばんコストをかけずに上げやすい
売上を構成するのは、客数・単価・来店頻度。この中で、集客(客数を増やす)はどうしても費用がかかります。来店頻度を上げるのも、動機づけの設計が必要で相当なリソースを使う。一方、単価を上げる決断自体にはお金がかかりません。メニューや商品設計の見直し、ちょっとした声かけで単価が上がることもある。だから、伸び悩んだときは「どの数字が足を引っ張っているか」を常にチェックしたい。そしてそもそも見る数字がない方は、集めるところから。毎日締めてレシートを保管しているだけで見返さないなら意味がありません。集められる数字はデータで残す。そう考え始めると、POSレジの導入や機械の更新、その費用に補助金を使えないか――といった経営判断につながっていきます。
まとめ
- マーケティングの実体は数字とのにらめっこ。優秀なマーケターに数字が読めない人はいない
- 思い込みの客層はだいたいズレている。数字を見ると、力を入れるべき相手が変わる
- 売上を客数と単価に分けると、落ちた本当の原因が見える(集客だと思ったら単価だった)
- 感覚は気づきに強く原因特定に弱い。感覚で仮説、数字で確認。評価軸はぶらさない
- まずは売上を客数・単価・頻度に分けてみる。数字がなければ集めるところから
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